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私たちは本当の意味で少しも成長していない

We Never Grow Up先月、東京の開発者たちとの集まりにいくつか参加した。私は、妻と自分の肝臓が許す限り、こういったイベントにできるだけたくさん行くことにしている。酒を酌み交わしながら開発者の創業者たちとざっくばらんに話をすることは、終わりなく魅力的だ。ほぼ毎回、何かしらの新しい学びがある。

必然として、こういったイベントにはエンジンヤード社のステッカーを持参しては欲しいという人のために配っている。ちょうど先月に電車の形をしたとても可愛いロゴステッカーをデザインしたばかりで、参加者たちはそれを見て大いに喜び、20分後には全て手元に無くなった。同じイベントで他の会社も自社ロゴを付した小さなキャンディーを用意していたが、それも大興奮とともに瞬く間に無くなった。

突然、この様子が奇妙に思えた。この部屋はとてつもなく頭脳明晰な人々で溢れており、大半が20~30代、50代も何人かいる。その全員が無料のステッカーとキャンディーに大興奮してハッピーになっていた。私たちは幼稚園以来、さほど成長していないようだ。

 

チームは王様を倒せるか

Teams Beat Kings先週、福岡で(株)ヌーラボの橋本さんと話す機会があり、彼は日本の新たなスタートアップ会社に起こりつつある転換を表す完璧な喩えを説明してくれた。伝統的に、日本の会社経営はいわば小さな王国のようだった。社長が王様だ。仮にも王様の意見に背こうものなら、その王国から粛々と立ち去ることを丁重に求められるだろう。最近のもっとも成功を遂げているスタートアップ会社の経営はチームで行っている。最終決定は一人の意見の結果ではなく、様々なスキルを持った様々な人たちの多種多様な見解がブレンドされたものだ。良いアイデアが湧き上がってくるというものだ。トップダウンの専制的な様式は、多くの若い日本人にはかなり奇妙に映る。

こういった若手の創業者や会社が年月を経てもこの変動を維持できるかどうかはまだわからないが、私は楽観的だ。私が手掛けたDisrupting Japanのインタビューのほぼすべてで創業者らは「創業者」ではなく「創業チーム」の不可欠な重要性について語っていた。はこうではなかった。20年前はこうではなかった。

弁護士との問題

Better Call Saul生活の質は関わる弁護士の数と反比例の関係にある。たとえ弁理士やゼネラルカウンシル(法務顧問)といった友好的な弁護士とだけしか関わらなくても、だ。ここでこうして弁護士に対して卑怯な攻撃を仕掛けようというわけではない。多くの弁護士はクライアントのことを親身に考え職務を全うしようとする素晴らしい人たちだ。「人」が問題なのではない。

問題なのは、弁護士に相談するということは、取り除くのに助けが必要な何かしらの障壁があるから、ということだ。弁護士が関与する問題というのは、最も苛立たしい類のもので、自力では解決できず、完全委譲もできず、その解決策を完全に理解できるというわけでもない。惨めな気分だ。

弁護士を訪ねるのは歯医者に行くのに似ている。私はかかりつけの歯医者さんのことが好きだし信頼もしている。彼の腕をもってすれば長い目で見て私の生活をより良いものにしてくれることは重々承知しているものの、いよいよの時しか行かない。誰しも、朝起きて歯医者や弁護士とのアポを楽しみにする者はいないだろう。

資金を得るvs.収益を挙げる

Money Tree私は、今年参加したスタートアップ向けイベントの中でも屈指の盛況なイベントの観客席に座っている。次は、一列に並んだスタートアップ会社のCEOらが自己紹介と会社紹介をすることになっている。印刷されたアジェンダには、各社の社名、創業者、業種、資本調達額が詳しく記されている。

…やれやれ何てこった!

資金調達額以外、スタートアップ会社の潜在力・将来性を伝える指標がほとんどない。資金調達は虚栄の指標のようになっており、愚か者ほどそれに目を向け過ぎる。収益にこそ真の意義があるというに、それにもかかわらずほとんどのスタートアップ会社は売上げの数値を公表するという考え方に怯えるのだ。

ビジネスの成長において資金調達というのはほんの小さな一部分に過ぎないのに、スタートアップはそれに固執し過ぎているのではないだろうか。

日本人が洋製日本語を会社名にできない理由

A Japanese Rose私は現在、多くの新規プロジェクトを抱えているが、そのほとんどが何かしらの形で日本に関連したものだ。それらを名付けるのが、ご想像以上に難しい。

問題は、関連のある日本語(と関連するドメイン)のほとんどがクールを装いたい欧米の会社に使われてしまっていることだ。名前の中に「sumo(相撲)」、「dojo(道場)」、「sushi(寿司)」、「ninja(忍者)」といった言葉を使用するサイトは多数あるけれども、そのほとんどが日本に拠点を置いていない。

いっそ、日本ならではの名称ということで、「cowboy(カウボーイ)」「hot dog(ホットドック)」「football(フットボール)」などを製品名にしてブランド化したほうが良いかもしれない。

スタートアップにとっての火渡り

HotFootThumbnail心ならずも私は、裸足になって30フィート(約9m)にわたり燃えている炭を目の前にしていた。私の背後では部族らが太鼓を打ち鳴らし、仲間の参加者たちは励ましの声を繰り返し上げている。炭からの熱気半分、恐怖半分で顔からは汗が滴り落ちていた。こんなところにいる自分は完全にイカれている。

一歩を踏み出し、その後気が付いた時には、向こう側に渡り切っていた。感覚も足自体も無事だった。

参加者の中には深い霊的な体験と感じた人もいれば、人生観が変わったとさえ言う人もいた。私の場合、この体験によって人生観こそ変わらなかったものの、その後私が事あるごとに困難と向き合わねばならなくなった際、喩えにするような象徴的な経験となった。

最も困難なプロジェクトというのが、まさにこの火渡りのようだ。本当に苦しいのは最初の一歩だけで、残りは瞬く間に放っておいてもついて来る。

未来に夢を描け。明日への計画を。

Good Luck Sign Thumb私がスタートアップへの指導や助言を行っている中で、生徒が思い浮かべる最も一般的なビジネス構想は多対多の市場だ。それが結果的にお勧めサイトになるようなものにしろ、クラウドソーシングを利用したソフトウェア開発にしろ、またはベビーシッターとそれを必要とする親とのマッチングにしても、すべてそのアイデアの構造は同じであり根本的な課題も同じだ。

生徒たちが抱く典型的な会社のイメージは、数千、数十万のアクティブユーザーの登録がすでにあるような成功後の会社だ。当然、自社製品を欲しがる何千もの人々の連絡先情報がすでに入手できることが簡単に想定できれば、こんなにシンプルなビジネスプランはない。

が、当然そうはいかない。

どのような生徒に対しても私からのアドバイスはひとつだ。「明日はどうしていくつもりですか?もし明日誰かがあなたのサイトを訪れてマーケットプレイスに何もないことがわかったら、二度と戻って来てはくれないでしょう。どうやって最初の1000ユーザーを獲得しますか?顧客に提供できるものは何ですか?」

幸いにも、妥当なビジネス構想には必ずと言って良いほど最初のユーザー基盤を作るための戦略が豊富にあり、それがベンチャーの運命を左右する。

第2の大口顧客を獲得することのほうが、最初の100人を獲得するよりずっと容易い。

創業者と参加者の対立

Everyone Likes SuccessGoogle Japanの欧米人マネージャーは、日本人の部下たちに気力と野心が欠けているようで困る、と不平を言っていた。皆、日本の一流校の卒業生か、一流企業からの転職組だということだ。彼は何度ディスカッションをしたとしても、最後は決まってこうだという:

「君たちは本当に頭が良いと思う。但し、このプロジェクトを完成まで推し進めないと、そしてもっと強気にならないと、出世できないというものだよ。」

 

 「構いません。今のままで幸せですし、好きでこの仕事をやっていますから。」

成功を遂げた会社のために働きたい人と、会社を成功させるために働きたい人とは、全く違うのだ。

投資家は(今もって)友達ではない

A typical Startup Investor以前にも少し触れたことがある内容ですが。

日本社会は紛れもなく、階級社会だ。社会的にもビジネス上でも、真に仲間と呼べるような関係を築けることはめったにない。目上の人のアドバイスや指示には敬意を払うべきだし、信頼できるというものだ。多くのアントレプレナーは成功のためにこの思考パターンをはねつける必要があるけれども、なかなかに難しい。日本社会の中には、それがほとんど目に見えないほどまでに浸透しているからだ。

スタートアップ会社の創業者らはベンチャーキャピタル(VC)との関係上で、この姿勢を取ることで心が痛むことが多いという。VCからお金を引き出すだけに、VCは創業者よりも目上の立場となるため、日本人のアントレプレナーたちは、あまりに時期尚早に、そしてあまりにも頻繁にVCの意見に従ってしまう。

当然、日本のベンチャーキャピタル企業側の人の中には、実世界での経験や業界の知識、その分野の専門的知識を持った人もおり、駆け出しの創始者にとって良き師として助けとなるだろう。しかし、そのような人は非常に少数で、そもそも相当に多忙だ。皮肉なことに、実世界での経験が少ないVCほど、自信に満ち溢れて最も多くのアドバイスをしているように思える。

資金調達のアドバイスが必要なら、VC全てに耳を傾けるべし。彼らはこの分野の真の専門家だ。市場の方向性やビジネスの拡大に関するアドバイスが欲しいのなら、VCの言うことにじっくりと注意深く耳を澄ます必要がある。彼らにお礼を告げた後は、さらに他のアントレプレナーや同業界の人から3つほど別の意見を聞く。それから意思決定をしたらいい。

アントレプレナー仲間は、ある程度の成功を収めた人はもちろんのこと、市場で完全に失敗した人からであっても、はるかに貴重な手掛かりを提供してくれることだろう。

恥からの成功

Facepalm_thumb私は日本語がうまい方だと思うが、流暢だとは全く思っていない。にもかかわらず、人前で日本語のスピーチをする機会があれば、準備する時間をもらえるのであれば、できるだけ受けるようにしている。大概はうまく行くのだが、時には完全崩壊することもある。

例え大失敗したとしても、私は得をすることができるのだ。

昨年、1000人余りの日本人の聴衆を前にPaaSやEngine Yard社について20分間のプレゼンテーションを行うため、招待された。その時私は、これまでにない程に最悪の大失敗に終わった。後方に映し出されたパワーポイント資料のバージョンは間違っているわ、終始リズムを掴めずにシドロモドロになるわ、ジョークも恐ろしいまでの沈黙を招くわで(ジョークの意味は分かってもらえても、ウケず)…

プレゼンの後、私のところに大勢の人がやって来て、「随分と勇気が要ったでしょう。自分が英語でプレゼンしたら、あんなにうまくはいかないですよ。」といったような会話が次々と繰り広げられた。最終的に、今後に繋がりそうな新たな手掛かりや新しい関係をたくさん得ることができた。

日本語でのひどいスピーチのほうが、立派な英語スピーチなんかよりもずっと効果があるというものだ。